上武絹の道ブログ
「世界遺産の楽しみ方 web出張版」第2回~国宝「彦根城」
2019.09.11
これから世界遺産を目指す! 滋賀県・彦根城の挑戦!
群馬県、あるいは上武地域では、「富岡製糸場と絹産業遺産群」という世界遺産が地元にあることは登録後5年を経てあたりまえになってきていますが、日本各地にはこれから地元の資産を登録しようと運動を進めているところが少なくありません。
琵琶湖のほとり、滋賀県彦根市の市街地にそびえる井伊氏の居城、国宝彦根城。
日本で天守が国宝に指定されている5つの城郭の一つで、年間70万人ほどの観光客が訪れる、滋賀県でも指折りの観光地です。
この彦根城、昨年あたりから彦根市や彦根商工会議所を中心に2024年の世界遺産登録を目指す運動が本格化してきました。
昨年5月には、「彦根城世界遺産登録 意見交換・応援1000人委員会」という市民組織も発足しました。
また、今年4月には地元の滋賀大学に、彦根商工会議所の寄付講座として「世界遺産学」の講座が開講され、私が授業全体のコーディネートを担当しています。
彦根城は、1992年にはすでに世界遺産の正式な候補となる「世界遺産暫定リスト」に記載されながらも、今まで一度もユネスコの世界遺産委員会に正式申請をしてきませんでした。いわば長い間、「塩漬け」状態だったわけです。
それは、同じ日本の城郭である姫路城が1992年に世界遺産に登録されたために、姫路城と異なる普遍的価値を見出すことがなかなか難しかったからです。
しかし、彦根城は、天守や郭などの城郭の主要な構成要素のほかに、大名の居館・庭園や足軽屋敷の遺構など、城郭を中心に発展した城下町の様子がよく残っているという姫路城にはない価値を見出し、そこを突破口に世界遺産を目指そうとしています。
これ以上世界遺産を増やしてどうするの?とか、世界遺産に登録されて訪問者が一気に増えて街の様子が変わったり、逆にブームが去ると急速に観光客が減り、土産物店や飲食店などが撤退したりして、地域が翻弄されるケースもある世界遺産。
これから目指す地域は、先に登録された地域で何が起きているのかしっかり観察して、登録後の課題についてあらかじめ考えておく必要があると感じます。